*10:03JST シンクレイヤ:放送通信インフラを支える独立系ベンダー、PBR0.5倍台かつ配当利回り4%超え
シンクレイヤ<1724>は、放送・通信インフラの設計、施工、機器販売を主軸とする独立系の情報通信エンジニアリング企業である。トータルインテグレーションと機器インテグレーションの2部門で構成される。トータルインテグレーションはケーブルテレビ局や大手第一種電気通信事業者を対象に光ファイバー敷設や局舎内設備工事などのインフラ構築を担う。通信系のバックグラウンドで使われるような機器を扱っており、J:COMを含む全国の顧客に対してサービスを手掛ける。機器インテグレーションは放送受信用端末や通信端末の販売を行う。近年、光回線契約数は全国で4,104.8万件(前年約69万件増)と増加基調が続き、高速・高品質通信ニーズの高まりが同社の技術提供領域を押し上げている。独立系であることを生かし、海外メーカーと協業した最新規格機器の検証・導入から、国内エコシステムに即した製品開発、保守運用まで一貫した体制を持つ。顧客は地域密着の放送通信事業者が多く、技術者不足に悩む地方局を中心に、伴走型の支援体制は高い評価を得ている。光化投資の増加を背景に同社の存在感は高まっており、収益性の高い局舎内工事を武器に事業基盤を拡大している。
同社の強みは、第一に独立系かつメーカー兼商社としての多面的な機能にある。住友電工や古河電工、日立系・NEC系など大手が並ぶ中、特定メーカーに縛られず最適機器を選定できる柔軟性は競争力が高い。海外から最新技術を調達し、自社研究施設で検証したうえで顧客へ提供できる点は大きな差別化要因であり、経営会議に招かれるほど顧客と深い関係を構築している。第二に、放送・通信のエコシステムを深く理解した製品・サービス開発力である。放送端末は工事業者が扱いやすい構造にするなど、利用者だけでなく施工者の効率性まで設計に反映させている。通信領域ではWi-Fi規格の高速化や高難度技術の品質検証を強みとし、事業者が安心して導入できる環境を整える。第三に、法人・公共領域への横展開可能性である。元来、放送・通信事業者向けに蓄積した技術は、企業や自治体ネットワークにも応用可能で、光配線やLAN、更にはセンター設備構築まで対応範囲が広い。市場構造の変化を踏まえた事業領域拡大余地は大きく、中期成長ドライバーとして期待される。
2025年12月期第3四半期の業績は、売上高7,332百万円(前年同期比9.7%減)、営業利益201百万円(同36.3%減)で着地した。トータルインテグレーションでは、前期末に大型光化案件が進捗した反動で売上は減少したが、利益面では大型の光化工事に加え、センター局及び基幹ネットワークの強靭化システムの導入など、収益性の高い案件が寄与して増益となった。機器インテグレーションでは、通信用光端末及びセンター機器の販売で一部の顧客の在庫調整の動きに影響を受けつつも、ネットワークの高速化に伴う端末及びセンター機器の獲得に努めた。利益面では、物価高や円安の影響を受け原材料費が高騰する中、一部の端末で利益率の良化は見られたが、競争環境の影響から十分な価格転嫁が難しかったようだ。通期計画は、売上高12,500百万円(前期比6.7%増)、営業利益750百万円(同14.8%増)を見込んでいる。
市場環境としては、固定ブロードバンド回線業界について、株式会社MM総研がまとめた「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査」(2025年3月末時点)によると、FTTH(光回線サービス)の契約数は4,104.8万件となり、前年同期比で約68.8万件増加している。安定した成長基調が続く一方で、高速・大容量通信への対応や地域に根ざした通信インフラの強化が求められている。また、ケーブルテレビ業界でも、地域インフラを担う通信基盤としての重要性が一層高まっている。災害対応や見守り、地域情報発信など、地域社会を支える新たな役割が求められる中、業界全体で高付加価値サービスへの転換が進展している。実際、同社でも高速通信需要が放送・通信事業者の投資を下支えしている。受注残は大型案件の完工で減少したが、端末販売はリードタイムが短く、案件は水面下で進行している状況である。
中計では、来期2026年12月期に売上高13,300百万円、営業利益880百万円を見込んでいる。既存分野技術と既存顧客の深耕、持続的な成長に向けた新領域の探索、組織・人事の改革やデジタル活用を基本方針としている。既存分野の深耕については、SYNC Labo活用による提供領域の拡大で、地域DXに対する課題にアプローチを行う。新領域の探索では、情報通信事業者のインフラや地域コンテンツを活かした地域DXサービスの構築を行う。その中で、無線高度活用領域、光ファイバー利活用領域、XR(AR・VR)領域等、既存事業との親和性と成長性を考慮して選択する。新領域は、中長期的には工事・機器販売のボラティリティを補完する収益源として期待される。また、局舎内工事は専門性が高く、同社が蓄積してきた検証力・技術力が競争優位として作用する。光回線は企業・自治体ネットワークにも導入が進んでおり、同社の技術資産は放送・通信事業者以外の法人・公共事業者にも応用可能である点は顧客拡大余地につながろう。M&Aによる非連続成長も将来的な選択肢として検討余地を示しつつ、基本方針に沿った戦略的な研究開発、投資も実施している。
同社は経営基盤強化と安定配当の継続を基本方針としており、2025年12月期の年間配当は28円を予定。今後も成長投資とのバランスを取りながら安定的な還元を実施する方針で、PBR1倍割れの改善に向けてIR強化や個人投資家層の拡大にも取り組む意向を示す。株主数が少ない点を課題として認識し、認知度向上施策も検討している。
総じて、足元の通信インフラの高度化需要は同社にとって強い追い風であり、高度な技術力と独立系としての柔軟な提案力は持続的な競争優位を支えている。PBR0.5倍台かつ配当利回り4%超えで推移するなか、法人・公共領域への展開余地や新規事業の創出も視野に、今後の業績成長・事業拡大に期待したい。
<NH>
同社の強みは、第一に独立系かつメーカー兼商社としての多面的な機能にある。住友電工や古河電工、日立系・NEC系など大手が並ぶ中、特定メーカーに縛られず最適機器を選定できる柔軟性は競争力が高い。海外から最新技術を調達し、自社研究施設で検証したうえで顧客へ提供できる点は大きな差別化要因であり、経営会議に招かれるほど顧客と深い関係を構築している。第二に、放送・通信のエコシステムを深く理解した製品・サービス開発力である。放送端末は工事業者が扱いやすい構造にするなど、利用者だけでなく施工者の効率性まで設計に反映させている。通信領域ではWi-Fi規格の高速化や高難度技術の品質検証を強みとし、事業者が安心して導入できる環境を整える。第三に、法人・公共領域への横展開可能性である。元来、放送・通信事業者向けに蓄積した技術は、企業や自治体ネットワークにも応用可能で、光配線やLAN、更にはセンター設備構築まで対応範囲が広い。市場構造の変化を踏まえた事業領域拡大余地は大きく、中期成長ドライバーとして期待される。
2025年12月期第3四半期の業績は、売上高7,332百万円(前年同期比9.7%減)、営業利益201百万円(同36.3%減)で着地した。トータルインテグレーションでは、前期末に大型光化案件が進捗した反動で売上は減少したが、利益面では大型の光化工事に加え、センター局及び基幹ネットワークの強靭化システムの導入など、収益性の高い案件が寄与して増益となった。機器インテグレーションでは、通信用光端末及びセンター機器の販売で一部の顧客の在庫調整の動きに影響を受けつつも、ネットワークの高速化に伴う端末及びセンター機器の獲得に努めた。利益面では、物価高や円安の影響を受け原材料費が高騰する中、一部の端末で利益率の良化は見られたが、競争環境の影響から十分な価格転嫁が難しかったようだ。通期計画は、売上高12,500百万円(前期比6.7%増)、営業利益750百万円(同14.8%増)を見込んでいる。
市場環境としては、固定ブロードバンド回線業界について、株式会社MM総研がまとめた「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査」(2025年3月末時点)によると、FTTH(光回線サービス)の契約数は4,104.8万件となり、前年同期比で約68.8万件増加している。安定した成長基調が続く一方で、高速・大容量通信への対応や地域に根ざした通信インフラの強化が求められている。また、ケーブルテレビ業界でも、地域インフラを担う通信基盤としての重要性が一層高まっている。災害対応や見守り、地域情報発信など、地域社会を支える新たな役割が求められる中、業界全体で高付加価値サービスへの転換が進展している。実際、同社でも高速通信需要が放送・通信事業者の投資を下支えしている。受注残は大型案件の完工で減少したが、端末販売はリードタイムが短く、案件は水面下で進行している状況である。
中計では、来期2026年12月期に売上高13,300百万円、営業利益880百万円を見込んでいる。既存分野技術と既存顧客の深耕、持続的な成長に向けた新領域の探索、組織・人事の改革やデジタル活用を基本方針としている。既存分野の深耕については、SYNC Labo活用による提供領域の拡大で、地域DXに対する課題にアプローチを行う。新領域の探索では、情報通信事業者のインフラや地域コンテンツを活かした地域DXサービスの構築を行う。その中で、無線高度活用領域、光ファイバー利活用領域、XR(AR・VR)領域等、既存事業との親和性と成長性を考慮して選択する。新領域は、中長期的には工事・機器販売のボラティリティを補完する収益源として期待される。また、局舎内工事は専門性が高く、同社が蓄積してきた検証力・技術力が競争優位として作用する。光回線は企業・自治体ネットワークにも導入が進んでおり、同社の技術資産は放送・通信事業者以外の法人・公共事業者にも応用可能である点は顧客拡大余地につながろう。M&Aによる非連続成長も将来的な選択肢として検討余地を示しつつ、基本方針に沿った戦略的な研究開発、投資も実施している。
同社は経営基盤強化と安定配当の継続を基本方針としており、2025年12月期の年間配当は28円を予定。今後も成長投資とのバランスを取りながら安定的な還元を実施する方針で、PBR1倍割れの改善に向けてIR強化や個人投資家層の拡大にも取り組む意向を示す。株主数が少ない点を課題として認識し、認知度向上施策も検討している。
総じて、足元の通信インフラの高度化需要は同社にとって強い追い風であり、高度な技術力と独立系としての柔軟な提案力は持続的な競争優位を支えている。PBR0.5倍台かつ配当利回り4%超えで推移するなか、法人・公共領域への展開余地や新規事業の創出も視野に、今後の業績成長・事業拡大に期待したい。
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