日本国土開発 Research Memo(5):厳しかった前中期経営計画も、最終年度は巻き返し

配信元:フィスコ
投稿:2025/12/11 11:35
*11:35JST 日本国土開発 Research Memo(5):厳しかった前中期経営計画も、最終年度は巻き返し ■日本国土開発<1887>の中期経営計画

1. 「中期経営計画2024」の振り返り
同社は2022年7月に「中期経営計画2024(2023年5月期〜2025年5月期)」を策定し、2025年5月期ROE10%水準、営業利益110億円などの計数目標を設定した。しかし、初年度の2023年5月期に土木事業において特定大型造成現場の是正工事を実施したこと、2024年5月期に同現場の工程遅延を回避するため突貫工事などを行ったことにより追加費用が発生し、大幅な工事損失を計上(セグメント損失62億円)した。建築事業は受注拡大にチャレンジしたものの、高い目標設定に対して十分な経営資源を投入できず、物価高騰や資材不足による工程遅延等の要因も加わり、不採算現場が複数発生したため、2024年5月期に収益性が悪化して大幅損失を計上(セグメント損失36億円)した。その結果、2024年5月期は営業損失94億円、経常損失73億円、親会社株主に帰属する当期純損失は71億円の大幅損失となった。この事態を受け2024年7月に中期経営計画の計数目標の見直し(最終年度ROE10%水準→5%水準、営業利益110億円→40億円に修正)を行うとともに、土木・建築事業に社長を本部長とする業績管理対策本部を設置し、再発防止策として管理体制強化、受注審査の厳格化、受注・設計・施工プロセスにおける対策を講じた。

これらの対策により、「中期経営計画2024」の最終年度である2025年5月期に建築事業はセグメント利益25億円に回復した。関連事業の販売用不動産の一部売却によるフロー収益や太陽光発電を中心としたエネルギー事業のストック収益などが貢献し、黒字化を達成した。しかし、土木事業は3期連続の大幅損失を計上した。これにより、中期経営計画における見直し後の財務目標においても計画未達(ROE2.0%、営業利益23億円)となり、2025年5月期の財務面の計数目標のほとんどが未達に終わった。

一方、「中期経営計画2024」における非財務目標については、脱炭素の取り組みにおいて2050年のカーボンニュートラルの目標であるSBTイニシアチブの「SBTネットゼロ」目標の認定を取得した。また、健康経営では「健康経営銘柄2025」(通算4回目)に選定されるなど、先進的な取り組みを実施した。


2028年5月期に営業利益90億円を目指す

2. 新「中期経営計画2027」
国内景気は雇用・所得環境の改善により回復傾向が続いているが、地政学リスクなどにより海外経済の先行きが不透明になってきたため、国内企業の成長も今後ペースが鈍化すると見られている。建設市場に関しては、堅調に推移しているうえ、脱炭素化関連投資や国土強靭化投資が拡大することが期待されている。一方、担い手不足や資材・労務費の高騰、少子化に伴う住宅建設投資の減退などにより収益性が低下する懸念があるため、AIやICTなどDXを図ることで労働時間削減や生産性向上につなげようとしている。また、大地震や豪雨など激甚災害の発生確率が高まるなか、被災地の復旧復興に果たす建設業の役割がより大きくなっていくと考えられている。

「中期経営計画2024」の振り返りやこうした外部環境認識を踏まえ、同社は2025年7月に新たに「中期経営計画2027(2026年5月期〜2028年5月期)」を策定した。

まず、同社は経営理念である「わが社はもっと豊かな社会づくりに貢献する」を目指す姿として改めて掲げた。立ち向かう社会課題として、「気候変動問題」「2030年問題」を掲げ、それらを解決する『先端の建設企業』となることを長期ビジョンとしている。“豊かな社会づくり”への貢献を目指し、経済的価値と社会的価値の相互作用により企業価値向上を図るサステナビリティ経営を推進するため、マテリアリティ(重要課題)の刷新を実施したうえで、新中期経営計画を策定した。なお、この長期ビジョンは2022年7月に策定されたが、「中期経営計画2027」でも継続される。

同社は、2023年からサステナビリティ経営を推進しており、事業活動を含めた財務目標と非財務目標達成を目指し、2021年10月に特定していたマテリアリティの見直しを行った。新たに「社会と共に発展」「持続可能性の追求」「経営基盤の強化」の3本柱として、6つのマテリアリティを特定した。

「中期経営計画2027」のミッションは「持続的に利益を生み出す経営基盤を再構築し、『成長軌道への回帰』を実現する」と定めた。また2026年5月期以降着実に向上して、長期ビジョン最終年度である2031年5月期までに10.0%の達成を目指す方針だ。「中期経営計画2027」では、この目標達成に向け、マテリアリティの改定やミッションの制定を背景に各事業の基本方針を策定し、これにより安定的に利益を生み出す経営基盤を再構築・強化して、2028年5月期にROEで8.0%(2025年5月期は2.0%)、営業利益90億円(2025年5月期は23億円)、3ヶ年投資額740億円(前中期経営計画期間中は330億円)、DOE(株主資本配当率)3.0%〜3.5%(前中期経営計画期間中は2.5〜3.0%)を目指すこととなった。

同時に、同社は前中期経営計画における大幅損失の再発防止策の確実な実行を掲げている。2024年に設置した業績管理対策本部において、計画の妥当性確認と実行状況の検証を行い、取締役会などで進捗を報告し、重点管理現場を中心に工程進捗と原価進捗などのモニタリングを強化して、新たな損失や赤字工事の発生を防止し、業績回復を実現する考えである。各プロセスにおける具体策としては、受注プロセスでは審査項目の厳格化、取組案件の選別、契約条件の精査、工程遅延防止、設計プロセスでは顧客要求事項の図面照査、図面の充実による見積精度向上、経済性・施工効率性の検証、施工プロセスでは施工管理体制の強化、品質管理体制の強化、運営管理・施工ミスの削減を推進する。特に受注プロセスにおいて、事業主との協議をより一層深める考えである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田 仁光)

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