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ホーチキ、売上高・利益ともに4期連続で過去最高を更新 火災防災のパイオニア企業として国内外で事業を展開

投稿:2025/12/22 13:00

目次

細井元氏(以下、細井):ホーチキ株式会社社長の細井です。本日は当社のIRセミナーをご視聴いただき、誠にありがとうございます。

本日は、ホーチキの基本情報と事業概要、2030年を目標として進めている中長期経営ビジョン「GLOBAL VISION 2030」の進捗状況、2026年3月期の業績予想について順にご説明します。

会社概要

細井:基本情報と事業概要についてです。ホーチキは、社名のとおり火災報知設備を軸に、グローバルな規模で火災防災事業を展開している会社です。ふだんは日常生活の中で意識されることが少ない設備ですが、いざという時には火災から人命や財産を守る役割を担っています。

設立は1918年で、現在の従業員数は連結で2,383名となっており、東証プライム市場に上場しています。

創業の原点

細井:当社の創業の原点について少し触れたいと思います。当社は1918年に創業し、今年で創立107年目を迎える企業です。

当時は近代化が進んでいた大正時代で、東京を火災から守ることを目的に損害保険会社13社が共同で出資し、東京に火災報知設備を導入するために設立したのが、当社の前身である東京報知機株式会社です。

そこで日本初の火災報知機の開発に成功し、1920年にはその第1号を日本橋に設置しました。それ以降も公共施設や当時の国会議事堂など、主要な国の建築物に設備を導入してきました。日本の近代化が始まった黎明期に誕生した当社は、火災防災のパイオニア企業であるという自負を持っています。

国内外に広がるホーチキグループ

細井:ホーチキは火災防災の業態で日本を拠点とする企業と見られる場合もあるかもしれませんが、当社の製品やシステムは世界129ヶ国で導入されています。

私どもは、幅広い地域で事業展開をしている企業です。海外では北米・中南米、欧州・中東・インド、アジア・パシフィックなど、現在19拠点で海外事業を展開しています。また、現地法人の子会社は9社あり、開発や生産工場もそれぞれ海外に3拠点ずつ保有し、グローバルに事業を展開しています。

事業概要

細井:当社の事業概要です。主に火災報知設備を中心に4つの事業セグメントを展開しています。そのうち、全体の売上高の約62パーセントを占めるのが「火災報知設備」で、内訳としては国内が3分の2、海外が3分の1となっています。

「保守」として、設置後の点検や整備工事などを担うサービス部門の事業セグメントが全体の約21パーセントを占めています。また、スプリンクラーや放水銃など、さまざまな「消火設備」が11.1パーセントです。入退室管理や鍵管理システムといった「防犯設備」も当社で展開しており、全体の約6.1パーセントとなっています。

主要製品紹介

細井:製品の詳細なご紹介や各事業の内容についてはスライドをご参照ください。

国内事業の環境

細井:国内の事業環境についてお話しします。火災防災という事業の最大の特徴は、消防法という規定に沿った製品やサービスが求められる点です。

建物の規模、用途、場合によっては建物の高さに応じて、消防用設備の設置がそれぞれ義務付けられています。さらに、これらの製品はすべて厳しい検定を合格したものでなければならないと定められています。

加えて、設置を終えた後も設備ごとに年2回、法定点検を行い、そのうち1回は所轄の消防署に点検結果を報告しなければなりません。このような厳格な法規制の中で、当社の事業需要が創出される点が最大の特徴です。

スライド右側に「防災ニーズが高まっている」とあるように、過去より大規模な火災が発生するたびに消防法は改正が行われています。また、ガイドラインの制定や規格の改定が行われるなど、災害に応じて防災技術が常に進化することも、この業界の特徴です。それによって新たな需要が創出される仕組みとなっています。

マーケットの動向については、スライド左下に防火対象物の件数を累積で示しています。防火対象物とは、当社の消防設備の設置が義務付けられている建物を指し、年々累積的に件数が増加しています。これは新築だけの市場ではなく、防火対象物はその後の点検や設備更新需要も含まれるため、当社のターゲット市場は堅調に増加しているといえます。

その中でも「複合用途」と呼ばれる建物があります。これはオフィス、商業施設、ホテルなどが複合的に1つの建物に組み合わさっている対象物で、主に首都圏の大型再開発が該当します。このような物件は近年、かなり増加しています。

また、業界用語で「R型」や「G型」と呼ばれる受信機があります。これらは火災報知設備の受信機で、大規模向けおよび高度化された火災防災システムとして位置付けられており、年々増加しています。当社は比較的大規模向けに強いと自負しており、再開発の建築計画の動向も含め、当面の間、市場は堅調に推移すると見ています。

しかし、構造的な人手不足により、建築計画の見直しや工期延長といった課題が足元で生じています。ただし、中長期的には市場は堅調に推移すると見ています。

国内事業におけるビジネスモデル

細井:当社のビジネスモデルについてご説明します。ホーチキはメーカーでありながら、スライドに示している3つのタイプのビジネスモデルを展開しています。

1つ目は「工事付」で、自社製品を建物に設置し、試験調整までを請け負うものです。商流は主にゼネコンやサブコンです。2つ目の「保守」は、文字どおり点検やそこから派生する整備工事を請け負うもので、商流はビルのオーナーやビル管理会社となります。3つ目の「機器販売」については、全国の代理店や販売店を経由して機器を卸すものです。

スライド右側のグラフのとおり、ホーチキ単体での国内売上高の約半分を工事付が占め、保守は約27パーセント、機器販売は約21パーセントです。このように、メーカーでありながら工事や点検保守といったエンジニアリング機能を一気通貫で持っている点が、当社のビジネスモデルであると考えています。

スライド下段には、新築建物が設計・建築されてからのライフサイクル全体を示す図を示しています。当社はメーカーとしてシステムの設計提案を行い、新築工事を受託します。その後、点検契約を結び、設備更新時期にはリニューアル工事を受託し、次の点検につなげていくという流れです。

特に最近では、この点検とリニューアルの分野でのストックビジネスが非常に堅調に伸びており、当社の収益基盤になっています。

国内事業における当社の強みとシェア

細井:当社の国内事業の強みについてお伝えします。まず、一貫したソリューションを提供できることです。当社は開発・生産だけでなく、販売、施工、メンテナンス、リニューアルに至るまで対応可能です。

また、創業107年の歴史による豊富な経験とナレッジに加え、過去より大規模物件へシステムを導入してきた実績があり、そのようなストックの積み上げも強みの1つです。さらに、施工と保守の部門を自社で抱えていることにより、全国にネットワークを持つ協力会社を含めた施工エンジニアリング体制を備えている点も、強みだと考えています。

このような強みにより、現在、大規模市場では火災報知設備で業界No.1、小・中規模市場でも業界第2位という評価をいただいています。

海外事業の環境

細井:次に海外についてご説明します。海外も日本と同様、それぞれの国によってレギュレーションや規格が厳格に定められています。代表的なものとしては、欧州のEN規格、米国のUL規格、オーストラリアのAS規格が挙げられます。実際には、欧州や米国の州ごとに、この規格の下に細かいレギュレーションが定められています。

この事業を海外で展開するには、それぞれの地域や国のレギュレーションにあわせた商品をラインアップする必要があり、これが事業の特性の1つとなっています。

また、防災ニーズが高まっており、それに対応しなければならない点は海外でも同じです。海外では大きな火災が発生するたびにレギュレーションが改定され、当社メーカーはその対応を求められます。

マーケットの動向については、全体的にオーガニックな成長が今後も期待されています。建物が建つ以上、不可欠な設備としてエッセンシャルなビジネスと位置付けられており、比較的景気の変動を受けにくく成長していると考えています。

海外事業のビジネスモデル

細井:海外における当社のビジネスモデルとして、国内との最大の違いは、機器販売に特化している点です。

将来的には、日本のソリューションモデルのように、事業全般にわたり領域を広げていきたいという思いがあります。しかし、各国の規格に適応した商品レンジの拡充が必要となるため、まずはそちらに注力し、海外のマーケットシェア拡大に力を入れている状況です。

また、スライド上部の図にもあるとおり、これまで当社の海外事業は主に感知器の単品販売で、電材商社に卸すかたちで展開していました。

2010年を過ぎた頃から本格的に海外事業の拡大に着手し、建物単位のシステムパッケージとしてシステムを納入できる体制を整えようと取り組んできました。その一環として、2012年にイギリスのKentec Electronics Limitedを買収しました。

それ以降、自社開発による受信機や周辺デバイス、メインのセンサや感知器などを組み合わせたシステムパッケージを建物単位で提案できる体制を整え、今もその事業を拡大させています。現在は、システム領域をさらに周辺分野に広げる取り組みを進めており、非常放送設備やワイヤレス関連にも領域を拡張しています。

これらの取り組みにより、ビジネスの販売形態も、従来は電材商社のみを窓口としていましたが、より商流の上流への営業アプローチを行い、ブランディングを進めています。結果として、海外事業はここ数年、右肩上がりで売上が伸びています。

海外事業における当社の強み

細井:日本の企業として海外でどのように戦っていくのかという、海外における当社の強みについてです。

1つ目に、日本の技術、特にセンサのセンシング技術が海外でも一定の評価をいただいています。具体例として、1987年にロンドン地下鉄で大規模な火災が発生しました。その対策として、高いセンシング機能を持つセンサが必要となり、ロンドン地下鉄が採用したのが当社の製品です。現在でもロンドン地下鉄では高いシェアを有しています。

2つ目に、当社は日本企業でありながら、欧州規格や米国規格など、現地の基準に対応できる開発および生産体制を持っています。この体制により、市場のニーズに対してタイムリーに製品供給ができる点も当社の強みと考えています。

3つ目は、テクニカルサポートでの差別化です。海外には大手企業が多くありますが、その特性として、現場で不具合が生じても新しい製品を送って対応を終える場合が多いです。

一方、当社は日本で培ってきたお客さまに対するエンジニアリングサポートやメンテナンスサポートがあり、お客さまに対する技術トレーニングや設置後のアフターサポートなどをサービスメニュー化しています。これらがお客さまから高く評価されており、「金額的にはちょっと高いけれどホーチキを使おう」という私どものファンもいます。

Ken氏(以下、Ken):海外事業に関して、現地企業と競合になるのではないかと思います。差別化の方法と、案件受注までの流れについて教えてください。

細井:差別化については、当社はまだニッチな市場でシェアポジションが低い状況にありますが、センサの品質に関してはご利用いただいているお客さまから非常に高い評価を得ています。

また、売り切りにはせず、テクニカルサポートにおいてもきめ細かな対応を実施しており、その結果としてホーチキのリピーターが増加しています。このようなお客さまを地道に開拓することを進めています。

営業面に関しては、従来は商社に物を卸すだけで、その先のお客さまの顔が見えていませんでした。しかし、十数年前にシステムパッケージでの販売に転換してから、設計事務所やビルのオーナーなど、さまざまな川上のお客さまに対して営業体制を強化してきました。

この結果、当社のシステムを指名していただけるお客さまが少しずつ増加しており、それが売上の増加につながっていると認識しています。

Ken:今後、海外事業を伸ばしていく上で重要な点は、川上のお客さまと良好な関係を築くことでしょうか?

細井:ポイントは商品レンジの拡充だと考えています。現在、システムパッケージである程度のラインアップは整っていますが、大規模向けの建物に関しては商品レンジがまだ十分ではありません。そのため、ビジネスを拡大するには、商品レンジのさらなる拡充が重要になります。

自社での開発を強化するだけでなく、アライアンスパートナーとの連携や、場合によってはM&Aによって商品レンジを拡充することも今後の施策の1つの選択肢です。

Ken:M&Aの対象としては、そのような製品を保有している企業が主になるのでしょうか?

細井:そのとおりです。まだ海外において当社は小さいポジションのため、製品だけでなく場合によっては販路も重要な要素になります。海外における販路は非常に多岐にわたります。そのため、そのような販路を持つ企業もターゲットになり得ると思います。

連結売上高・営業利益の推移

細井:国内および海外の事業展開において、業績面では売上高と利益について4期連続で過去最高を更新することができました。今年度は5期連続の更新を目指しています。

売上高の内訳としては、国内ストックや海外事業の業績が伸びており、全体を押し上げています。営業利益も増加しており、収益性の面で営業利益率が段階的に向上しています。今後もさらなる収益性の向上を目指して取り組みを進めていきたいと考えています。

各地域別およびセグメント別の詳細については、スライドをご確認ください。

Ken:セグメントごとの利益率について、ほとんどすべてのセグメントで改善が見られます。それぞれどのような理由で改善されたのでしょうか?

細井:まず国内について、火災報知設備、保守、消火といった分野に関して、昨今の建築鋼材の値上げや人手不足の影響を受け、コストの上昇分を価格に転嫁する流れがお客さまに受け入れられるようになってきています。これが非常に大きなポイントです。

その上で人手不足という状況において、事業体制の範囲内で生産性を向上させるため、採算性の高い案件に重点を置く選別受注にシフトしています。これが収益性向上の一因だと考えています。

Ken:サブコンから仕事をもらう機会が多いとのことですが、現在、サブコンの利益率が非常に高まり、マーケットでも認識されているようです。サブコンが厳しい状況にあると御社も単価を引き上げるのは難しいと思いますが、そのような利益率の向上が後押しになっているという面はありますか?

細井:間違いなく後押しになっています。現在、ゼネコンやサブコンのみなさまも人手不足の影響で、受注したくてもできないような状況です。それだけ需要が計画的に存在しているということだと思いますが、このような事業環境の中で、ゼネコンやサブコン、そして当社も収益性を向上させられる状況にあると考えています。

Ken:業界のそのような理解も進んでいるということですね。

GLOBAL VISION2030 エグゼクティブサマリ

細井:当社が現在進めている中長期経営ビジョンの進捗についてご説明します。ホーチキグループは、2030年に向けて「人と技術の力で世界中にLife Safetyを創造する」というスローガンを掲げて事業展開を行っています。

2024年から始まった中期経営計画は、2026年度を最終年度とするPhase1と、2027年度から開始するPhase2の2つのステージに分けられています。特にPhase1の3年間は将来の新たな価値を創出するためのさまざまな事業基盤を改革するステージです。

基本方針として掲げているのは、まず、事業ポートフォリオの最適化により収益性の向上を図ることです。次に人的資本経営の推進として、当社の生業において基盤となる人材について、その価値を最大化するために投資を行っていきます。そして、DXによるイノベーション推進です。

この3つを掲げて、2030年までの早い段階で海外売上高比率を30パーセントまで引き上げ、「日本の“ホーチキ”から世界の“HOCHIKI”へ」の転換を目指したいと考えています。

基本方針1.事業ポートフォリオ最適化による資本収益性向上戦略

細井:基本方針の1つ目である事業ポートフォリオ最適化による資本収益性向上についてです。現在行っているのは、スライド左上の4つです。

まず、社内組織を機能別から4つの事業部門制に改編し、セグメントの開示区分と同期させています。現在はオペレーション段階にあります。次に、従来は売上や受注、利益といったPL思考でしたが、資本コストや投下資本の効率性を含めたBS思考に転換するよう事業マネジメントを変えています。

さらに、各事業が自己責任で将来の事業成長を戦略として練り、必要な投資についてもポートフォリオ委員会を立ち上げて厳格にマネジメントする取り組みを進めています。そのような中で選択と集中を積極的に行い、ポートフォリオの組み換えを推進しています。

Phase1では、火災放置設備とストックのリニューアル、保守の強化に注力しています。数字は3部門とも非常に堅調に伸びています。計画としては、まず商品領域を周辺まで拡張し、販売網を拡大するとともに、それに必要なR&Dや生産体制を強化することを進めています。

保守とリニューアルは当社の収益基盤の柱となっているため、採算性をより高めるための取り組みを進めています。現状では依然として人の手に頼る部分が多いです。これをDXによるスマート化や、人的事業基盤そのものの強化を進めていく取り組みを行っています。

Ken:ストックの部分を強化されるとのことですが、具体的に保守業務をどのように進めていくのか、またストックを伸ばすための工夫として何か取り組みをしているのか教えてください。

細井:もともと、当社が新築でシステムを納めたものの保守契約率は非常に低い状況です。システムが大規模で、メーカーでなければ点検をしっかりと行えないようなものがほとんどを占めています。建物の火災防災システムが高度・大規模化しているため、そのような点からもメーカーによる点検の需要は今後増加すると考えています。

加えて、これからリモートメンテナンスの遠隔監視システムや、さまざまなDXによる領域拡張を進めていくことで、メーカーの優位性がさらに強調されていくと思います。

課題は、それを請け負える事業体制を整備する必要があることです。社内体制の強化はもちろん、全国にいるパートナー企業と連携し、その需要を適切に取り込める体制を構築することが、もっとも重要なポイントだと考えています。

Ken:先ほど選別受注といった話がありましたが、案件はかなり多く寄せられているものの、それをすべて引き受けるには人手が足りない状況なのでしょうか?

細井:そのような状況です。特に新築に関しては大型化が進んでいます。また、火災報知設備や消火設備も同様で、大型の物件を1つ受注すると工期が2年から3年程度必要となり、それに伴い人員の投入も増加します。

当社としては仕事量を平準化する必要があるため、大型物件の端境期をリニューアルで埋めながら進めているところです。

基本方針2.人的資本経営の推進

細井:基本方針の2つ目である人的資本経営の推進についてです。人がビジネスの基盤となっているため、ここに力を入れています。主に制度改革、人材の投入、教育の3本柱です。

スライド左下のとおり、Phase1では26億円相当の人的投資を計画しています。また前中期経営計画においては3年間で10億円が投資されており、それと比較すると現中期経営計画の3年間では2.6倍の人的投資を進めているということです。2025年度については、計画を含めて約20億円の人的投資を進めています。

制度改革においては、今年度から新しい人事制度を導入しました。また、採用では事業拡大に伴い必要な人員を採用、育成する取り組みを進めています。教育に関しても、一人ひとりの潜在能力を最大化する教育機会をさまざまな角度から提供する体制を整え、進めています。

基本方針3.DXによるイノベーション創出

細井:3つ目のDXによるイノベーションの創出についてです。名前こそかっこいいものの、まだそこまで実現できていないのが現状です。

当社の業態は消防法という法規制の下で事業を行っているため、これを超えたソリューションの展開は正直にいって難しいです。ただし、最近のDXや生成AIの台頭により、環境が大きく変化してきました。これは民間だけでなく、消防行政も含めて新しいソリューションを拡大していく機運が高まっています。

今後はDXによるイノベーションを通じて、消防分野でも付加価値の高いソリューション領域を広げ、事業を拡大したいと考えています。その第一歩として、クラウドを活用した新しいサブスクリプション型のビジネスモデルを展開しており、今年4月から防災クラウドサービス「HOCHIKI as a Service(HCKaaS)」の提供を開始しました。

従来、火災情報は建物内だけにとどまり、外部には共有されませんでした。これをクラウドに上げて共有することで、各種建物のOSとの連携や、火災情報を活用した動的な避難誘導への活用など、火災情報とその他の情報を組み合わせて、セキュリティを含むソリューション領域を広げようとしています。

当社だけでなく、複数のパートナー企業と連携し、火災情報を活用してどのようなソリューションが実現可能かを鋭意検討中です。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

細井:中期経営計画で当社が注力している内容についてです。資本コストや株価を意識した経営を実現するための取り組みを進めています。スライド左側にPBR、ROE、PERという指標を示しています。数年前まで当社のPBRは1倍を下回り、PERも10倍を下回る場面が多く見られました。

現在は、プライム市場において企業価値を高めるという方針のもと、全社を挙げてこれらの指標を向上させるために取り組んでいます。事業ポートフォリオ経営の推進や収益性改善、流動性向上を通じた投資家層の拡大といったさまざまな取り組みを進めています。

資本効率性の改善

細井:企業価値向上に向けた取り組みのうち、資本効率性の改善と株式市場の対話強化について進めている内容をお話しします。

全社で資本効率性を改善するために、ROIC指標を用いた経営を進めています。全社ROICを事業別に分解し、4つの事業ごとのROICを事業KPIに設定した上で、NOPAT率の向上と投下資本回転率を目標に、さまざまな現場に落とし込んだオペレーションをマネジメントしています。

その結果、前期はROICを前々期より2.9ポイント引き上げ、11.1パーセントを達成しました。今年度もさらにこれを高める取り組みを進めています。

スライド右側には事業別ROICの特徴が示されています。投下資本が比較的多く資本収益性が厳しい事業や、保守のように投下資本が少なく収益性が高い事業など、さまざまな事業の特性を、KPI指標を用いて評価、分析しながら、適切な経営資源を投入しています。これによりポートフォリオ経営を実現し、収益性の向上を図る取り組みを進めているところです。

株主市場の対話強化

細井:株式市場の対話強化についてです。スライド左上のグラフのように、今年度は中間期において機関投資家との1on1を海外と国内で71回開催しました。

プライム市場上場企業として、当社の企業価値や将来の成長期待についてご理解いただけるよう、今後もIR活動を強化していきます。今年度もこの個人投資家向け説明会を皮切りに、来年3月に向けて投資家向け説明会を開催する予定です。

2026年3月期業績(予想)エグゼクティブサマリ

細井:今期の業績予想についてお話しします。上期の業績は非常に好調で、売上高は5パーセント、営業利益は27パーセント、計画を上回って推移しました。ただし、現段階では、通期予想を期初どおりに据え置いています。

上期の好調な業績の背景として、消化設備の大型物件が前倒しで売り上がりました。一方で、後期の予定がなかなか立たない状況で、下期の未売上残の進捗をさらに精査する必要があります。また、海外事業も現時点では非常に好調ですが、一部他社から供給を受けているOEM製品に供給リスクがあり、総合的に影響を精査しているところです。

下期を含めた通期については、合理的な見通しが立った段階で、修正が必要な場合は速やかに公表します。

Ken:業績予想がかなり保守的なのではないかと思っています。業績予想はどのように組み立てているのでしょうか?

細井:当社のビジネスモデルは機器販売、工事付、保守の3つです。工事付は請負で、受注残があり、今年売り上がるものについてはある程度計画を立てることができます。それに当期の受注がどの程度積み上がり、当期売上となるのかを加味して売上予測を立てています。

機器販売については、先行指標を見つけることが難しいため、足元の市場環境や営業担当者がお客さまからいただく情報をもとに数字を予測しています。

保守については、年間で定期点検を実施しているものに関しては数字が把握できますが、そこから派生する整備工事や改修工事については予測が難しい部分があります。そのため、ある程度時間をかけて残り期間を精査しなければならず、正確な予測には時間がかかるという特性があります。

Ken:大型案件が下期に偏ることや、そうなった場合に業績が超過するようなことはよくありますか?

細井:特に大型案件についてはそのような傾向があります。現在は完工も含めて、工事の進捗に応じて売上を計上するかたちをとっているため、進捗が来年4月になるのか今年3月になるのかで、大型案件の数字が大きく変動することがあります。このような影響は確かにあると思います。

Ken:直近では、サブコンの進捗状況や人手不足などが影響して、変動が大きくなるということはありますか?

細井:あります。従来に比べて予測が難しくなっている部分があると感じています。

上期において消化設備での売上が予想以上に多くなりましたが、当初はそこまで前倒しになるとは見込んでいませんでした。このように、結果として工事の進捗が想定以上に進むという事例もあるため、そのようなことはあるかと思います。

配当方針

細井:配当についてです。2026年3月期の配当は、2025年3月期と同額の80円を予想しています。

配当性向は27.6パーセントで、まだ十分ではないという認識です。しかし、Phase1は構造改革のステージであるとお伝えしたとおり、海外事業の拡大に向けたさまざまな生産設備の増強投資などを計画しています。

この3年間は、まず将来の成長に向けた投資を優先します。その投資計画が確実になった上で、創出されるキャッシュの見通しを含めて、株主さまへの還元方針を確立していきたい考えです。

質疑応答:海外における競合環境について

飯村美樹氏(以下、飯村):「海外では、競合する企業は現地にも多いのでしょうか? それとも世界的な競合企業と各地で競っているのでしょうか?」というご質問です。

細井:海外では、当社のコンペティターとなる会社の多くが、コングロマリット企業の一事業部門として構成されています。そのような意味では、競合はコングロマリットの大企業ともいえますが、実際に競い合っているのはその傘下にある事業部門の会社です。

国内と海外の特徴の違いとして、海外においては火災報知設備におけるセンサやパネルなど、それぞれの製品ごとに会社が区分されています。そのため、1つのシステムをパッケージ化する時には、当社のようなシステムパッケージと競合しながら受注を増やす活動を行っています。

質疑応答:保守事業の収益性について

飯村:「保守事業の収益性が高いことに驚いています。御社ならではの事業モデルがあるのですか?」というご質問です。

細井:保守事業については、当社の中でも相対的に収益性が高い部門と捉えています。当社の保守は、メーカーとして専門性の高い対象案件を多く扱っているため、提供する価値を価格にしっかり反映させており、それについてお客さまにご理解いただいています。

点検契約自体よりも、そこから派生してくる整備工事といわれるものについては当社にご用命いただく機会が多いため、比較的競争環境が少なく、収益性が保たれているのだろうと思います。

質疑応答:海外における火災防災基準について

Ken:「最近、香港での大規模火災が話題となっていますが、海外では火災対策などが比較的甘いのでしょうか?」というご質問です。

細井:国によって、機器に関する規制だけでなく、設備導入時の施工規則も異なります。そのため、一概に「この国は規制が厳しい」「厳しくない」とはいえません。

少なくとも香港の火災で起きた状況は、日本の建築基準法や消防法の下では起こり得ない内容であると理解しています。

質疑応答:製品の海外での実例について

Ken:「御社の製品で、海外で火災の時に機能しなかったような事例はありますか?」というご質問です。

細井:当社の製品で機能性に問題が生じ、大きな事故につながったという事例はまったくありません。

質疑応答:大型案件の事業環境について

Ken:大型の案件も比較的多いというお話がありましたが、「最近、再開発の延期や長期化が話題になっています。そのあたりの影響はいかがでしょうか?」というご質問です。

細井:その影響はあります。すでに計画されているものでも、計画自体が見直しになるケースもありますし、建築工期自体を大きく後ろにずらすこともあります。そのような意味では、プロジェクトの案件ベースでは先を読みづらいのが実態です。

需要自体は、計画を含めて中長期的に一定量存在するため、当社の事業環境が今後数年で大きく悪化するとは考えていません。

質疑応答:ストックビジネスの今後の展望について

Ken:「国内事業では保守、リニューアルを中心としたストック型ビジネスが安定成長を続けています。中長期的に国内売上のうちストックの比率をどの水準まで伸ばしていきたいのか、目安や目標はありますか?」というご質問です。

細井:リニューアル関係と新築のウエートについて特定の目標は設定していませんが、現状ではリニューアルが6、新築が4というイメージです。

ストックビジネスを獲得するためには、新築の入り口で当社のシステムを確実に導入していく必要があります。その中で施工能力も含め、どのようにリニューアルとのバランスをとるかが非常に重要な課題です。

当社が過去に納めたシステムには潜在的な更新需要があり、メンテナンスの裾野から考えると営業ターゲットはまだ大きいと見ています。そのため、それを取り込む体制を整えれば、必然的にストックのウエートがさらに高くなる可能性があると考えています。

Ken:更新が出やすい物件の特徴や、更新が出てくる期間の目安があれば教えてください。

細井:当社では、設備については設置後15年で更新のご提案をさせていただいています。そこから予算化が進むため、15年から20年、長い場合では25年ほどで全面的な設備更新が行われるのが一般的です。

Ken:現在は2000年前後に建てられた物件が多く出てきているということでしょうか?

細井:日本の超高層ビルの歴史は1960年代に「霞が関ビル」から始まったと思いますが、そのビルは現在もしっかりと運営されています。そのような点から高層ビルの寿命を考えると、15年もしくは20年ごとのリニューアルが、多い場合で2回から3回、場合によっては4回というサイクルで発生すると見込まれます。現在の需要が多いのは、そのようなものの積み上げによるものです。

細井氏からのご挨拶

細井:本日はご視聴いただきありがとうございます。ホーチキは1918年の創立以来、人命と財産を火災から守るという使命のもとに事業を展開しています。

今後は、まず1つ目にグローバル化を進め、「日本の“ホーチキ”から世界の“HOCHIKI”」を目指していきます。もう1つは事業領域の拡張です。従来の法規制の範囲から、規制外の領域までソリューションを広げていきます。

この2軸で引き続き企業価値を高め、持続的な成長を目指して取り組んでいきます。引き続きご支援をよろしくお願いします。

当日に寄せられたその他の質問と回答

<質問1>

質問:「日本のホーチキ」から「世界のHOCHIKI」への転換を掲げていますが、海外売上比率30パーセント超を達成するうえで、最大のボトルネックはどこにあると認識されていますか?

回答:商品領域の拡大が重要なポイントと考えています。大規模建物向けの商品レンジが十分でないため、ビジネスの拡大には自社の開発強化だけでなく、アライアンスパートナーとの連携や場合によりM&Aによる商品レンジ拡充がキーになると考えています。

<質問2>

質問:国内では大分県でも大規模な火災がありました。木造の戸建て住宅でも御社製品は導入されていますか? また今後より普及させていくのでしょうか?

回答:住宅用火災警報器については2003年に生産販売を行っており、戸建て住宅に当社製品が導入されているケースはあります。しかしながら、当社内におけるリソース配分の最適化を図るため2025年3月に生産販売終了を決定したところです。

<質問3>

質問:欧州・中東・インド、アジア太平洋、北米で成長率に差がありますが、今後5年で最も伸ばしたい地域と、その理由を教えてください。

回答:特に高い成長を見込んでいるのはアジア・太平洋です。その中でも東南アジアについては、経済発展の途上であり建築需要が旺盛です。現状においても、ベトナムは高いシェアがあり、業績も伸びています。

<質問4>

質問:HCKaaSは、従来の機器販売・保守と比較して、中長期的に利益率の高い事業になるポテンシャルがあるとお考えでしょうか?

回答:今年の4月にサービスを開始し、まだ販売計画を公表できる段階ではありませんが、クラウドシステムの提供がビジネスモデルとなりますので、将来的にご契約件数が増加していけば利益率の高い事業になるポテンシャルはあると考えています。

<質問5>

質問:株価は大きく上昇し、5,000円に接近しています。株式分割についての考え方を教えてください。

回答:直近1年間で株価が倍以上になり、最低投資単価も上昇しました。投資家のみなさまにとって投資しやすい環境を整えることを常に意識していますので、株価水準を見て適宜検討したいと考えています。

<質問6>

質問:半導体などの工場や発電所などの設備投資が増えていますが、御社にポジティブでしょうか?

回答:工場などの設備投資が増えていることは、当社にとってポジティブな状況です。引き合いも増えていますので、当社の施工キャパシティなどを考慮しながら受注活動を進めています。

配信元: ログミーファイナンス

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