明日の株式相場に向けて=「アンソロピック・ショック」の行方
きょう(5日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比475円安の5万3818円と続落。上下に荒い値動きというか、感覚的には先物主導で四方八方に振り回されるような地合いである。AIアルゴリズムトレードのなすがままに、ここ数日は取引開始前に人間が想定するようなシナリオ通りに動いた試しがない。2日新甫(しんぽ)は荒れるという相場格言通り2月相場は日経平均が大幅安でスタートしたが、3日に2000円を超える記録的な上昇をみせ、終値は5万4720円で史上最高値を更新した。と、ここまでは良かったが、その後は再び急降下、2営業日合計で一時1000円を超える深押しとなった。この状況は2月3日の「節分天井」を意識させる流れともいえる。個別株の物色意欲は非常に活発で、きょうは前日に輪をかけて値上がり銘柄数が多く、プライム市場の72%の銘柄が上昇した。しかし、マーケットを代表する主力株への売りが顕著で、売買代金上位にランクされた企業は軒並み安となり、1銘柄だけソニーグループ<6758.T>がわずかにプラス圏で着地するのみとなった。米国のナスダック安に象徴されるAI関連及びその周辺株への売り圧力が東京市場にも伝播しており、投資家サイドも腰が引けてしまう。前日の当欄でも触れたように、アドバンテスト<6857.T>の日足チャートが暗示的だ。同社株は1月29日にマドを開けて急騰を演じ、上場来高値2万9250円をつけたのだが、同日は安値引けとなり大陰線となった。そして翌日はマドを開けて下げるアイランドリバーサルで、滅多に見られない大天井チャートを示唆した。収益成長に陰りはみられないが、テクニカル的に今のタイミングでの押し目買いは蛮勇にも近い。
今回は「アンソロピック・ショック」とでもいうべきか、ソフトウェア関連でSaaS型ビジネスモデルの銘柄群が売りの洗礼を浴びている。以前マーケットを騒がせた「ディープシーク・ショック」に似ている部分がある。この2つの事例で共通するワードはAIの民主化というと聞こえはいいが、換言すればAIビジネスのデフレ化である。それを使う側すなわちユーザーにとってはコストが低減され喜ばしい話だが、ベンダーにとっては商業的な旨味が消えてしまう。
ディープシーク・ショックの時は、AIサーバーなどへの高コストの投資は必要なくなるというコンセプトで、エヌビディア<NVDA>が手掛ける最先端AI半導体などへのニーズが激減するのではないかと騒がれた。だが、その後にこの話が大きくクローズアップされてきた形跡はない。昨年4月を境に何事もなかったかのようにエヌビディアの株価は再浮上に転じ、ほどなくして上場来高値圏へと突入した。ビッグテックのAIデータセンターへの投資意欲も一瞬クールダウンしたが、その後再び過熱の道程をたどっている。
その時の記憶が今回も繰り返される可能性はある。ただし、現状では決め打ちはできず様子を見るよりないところである。アンソロピックが開発したのは高度なAIエージェント機能を付加した自動化ツールで、これが業務効率化ソフトを凌駕し、法務やデータ分析サービスなどをクラウドで提供する企業の仕事を奪う、というコンセプトで株式市場を大きく揺さぶった。ソフトウェア業界にとっては脅威であり、1日で関連銘柄の急落による時価総額消失は日本円で100兆円以上に達したとも言われている。SaaS型ビジネスを展開する企業が収益機会を失えば、当然ながらAIサーバーに対するニーズも激減しデータセンターへの過剰投資懸念が再び膨張することになる。インフラも含めAI周辺企業の商機消滅につながる一大事という筋書きである。
しかし、エヌビディアのジェンスン・ファンCEOはこの悪魔的シナリオは実現しないという見方を示している。そもそもAI技術の進歩が、業界全体の時価総額をシュリンクさせるというのは合理に反する。業界全体にとってはプラスに作用しなければおかしい。アンソロピック・ショックがあるとするなら、それはこれまでとは「価値が存在する場所」が移動するということであり、それによって淘汰される企業は出てくるが、更に進化したAIビジネスによって新たに価値を生む場所が出現する。その源泉にいち早くスポットを当て経営資源を投下し、顧客ニーズを獲得した企業が勝ち組ということになる。
あすのスケジュールでは、12月の家計調査、1月上中旬の貿易統計がいずれも朝方取引開始前に発表されるほか、前場取引時間中に3カ月物国庫短期証券の入札が行われる。後場取引時間中には12月の景気動向指数(速報値)が開示される。また、日銀が消費活動指数を公表する。取引終了後には年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の25年10~12月期運用実績が開示される。主要企業の決算発表では大成建設<1801.T>、三越伊勢丹ホールディングス<3099.T>、トヨタ自動車<7203.T>、東京エレクトロン<8035.T>、三井不動産<8801.T>、KDDI<9433.T>などが予定される。海外ではインド準備銀行(中銀)が金融政策決定会合で政策金利を決定する。このほか、2月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)、12月の米消費者信用残高などが発表される。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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