I-ne、ヘアケア国内シェアNo.1実績を軸にスキンケア他が急伸 独自のブランド管理でヒット量産、EC×小売モデルで成長加速
ログミー IR Movie "株式会社 I-ne (4933) IR対談"
1UP投資部屋Ken氏(以下、Ken):本日のIR対談は、I-ne代表取締役社長の大西さまにお越しいただきました。本日はよろしくお願いします。
大西洋平氏(以下、大西):よろしくお願いします。
Ken:I-neといえば、多くの個人投資家のみなさまがご存じだと思います。
大西:ありがとうございます。
Ken:私も上場時から拝見しており、周囲の投資家も売買するなど注目している印象です。本日は、業績や今後の成長戦略などについておうかがいできればと思います。まず、大西さまの自己紹介をお願いします。
大西:株式会社I-ne代表取締役社長の大西洋平です。私は2007年、大学在学中に個人事業主として起業しました。当時はまだスマートフォンが普及しておらず、ガラケーで、通信販売(通販)を利用して商品を購入し始めた人が増え始めた時期でした。ガラケーの小窓で、多くの人が商品を購入し始めたことが非常におもしろく、「モバイル通販という業態でなにか事業ができないか?」と考えました。
そこで、最初にアパレルの通販で起業し、美容の領域へ徐々にシフトチェンジしていきました。その結果、eコマースやモバイル通販を通じて美容商品を販売し、ヒット商品を実績としてオフライン営業で流通させるモデルを20年間ほど続けています。
Ken:私は学生時代は比較的自由に遊んだりしていましたが、大学在学中に起業しようと思ったきっかけはありますか?
大西:私もアルバイトばかりしていました。当時は、サイバーエージェント社の藤田氏や楽天グループ社の三木谷氏、ZOZO社の前澤氏のような若い経営者がどんどんITで起業したり上場したりしていました。そのようなニュースを見て、「自分もやってみたい」という思いが非常に強くなりました。
Ken:現在、インターネットでゼロから会社を立ち上げることは、toCビジネスも含めてなかなか難しいと思います。一方で当時は、やり方次第で比較的可能性があった時代だったのでしょうか?
大西:そうです。可能性が無限大でした。
Ken:そこから実績を積まれて、今では売上もかなり大きい会社に成長されているのですね。
At a Glance

Ken:スライドの会社概要について教えていただけますか?
大西:まず、足元の実績についてご説明します。当社は、シャンプーや美容家電など、さまざまな美容カテゴリーの商品をファブレスメーカーとして製造し、eコマースやドラッグストア、家電量販店などに卸しています。
その中の実績を一部ご紹介すると、ヘアケアでは国内シェアで1位となった実績もあります。1位や2位を競うようなシェアを占めている会社です。
Ken:私が手に持っている商品が「BOTANIST」です。私も長い間「BOTANIST」の最もメジャーでシンプルな商品を使っていました。このような有名な商品をたくさん生み出されているのですね。
大西:ヘアアイロンなどの美容家電も取り扱っており、ヘアアイロンのカテゴリーでも国内トップクラスのシェアを占めています。
Ken:「SALONIA」ですか?
大西:そうです。
Ken:ビジネスモデルは、工場を持たないファブレスメーカーですか?
大西:そうです。ただし、自社に「JBIST(ジェービスト)」と呼んでいる研究開発所があります。「JBIST」には優秀な研究員が在籍しており、彼らが作った処方の商品をOEM企業と連携して製造する流れです。
Ken:バランスシートも比較的大きくならず、業績によるとはいえ、売上が伸びれば比較的営業利益率も上げやすいモデルということですね?
大西:おっしゃるとおりです。
カテゴリーについて

Ken:その他にも、最近では柔軟剤や目薬も展開されていますね?
大西:ヘアケア系カテゴリーや美容家電カテゴリーをメインに取り組んできましたが、この2年から3年はスキンケア他カテゴリーにも力を入れてきました。それが徐々に成果を上げてきており、スキンケア他カテゴリーが非常に急成長しています。
Ken:そのあたりについても、後ほどおうかがいできたらと思います。
MISSION

Ken:続いて、経営理念についてご説明いただけますか?
大西:スライドは当社のミッションです。「We are Social Beauty Innovators for Chain of Happiness」「私たちは、美しく革新的な方法で、『幸せの連鎖』があふれる社会の実現に挑戦し続けます。」です。
「Chain of Happiness」は「幸せの連鎖」という意味ですが、創業当時の状況が背景にあります。私は学生起業家だったため、はじめは「自由になりたい」や、恥ずかしながら「お金が欲しい」といった思いもありました。しかし、創業から5年ほど経ち、年商10億円が見えてきた時期に、非常に満たされない時期が訪れました。売上や利益も順調に伸び、社員にしっかりと給料を支払い、自分自身もある程度の収入を得られるようになったにもかかわらず、満たされない日々が続いていました。
そのような時期に、さまざまな情報をインプットしたり、いろいろな経営者の方と話をしたりする中で、経営者の先輩から「仕事をしていて、お金を稼ぐとか売上を上げる以外に、胸が熱くなる瞬間があるのではないか?」とアドバイスをいただきました。
その言葉に感銘を受け、オフィスに戻って創業時からのお客さまのレビューをすべて見直したところ、ストレートヘアアイロンをご購入いただいた、中学生くらいのご息女がいらっしゃるお母さまからのレビューがありました。
ご息女が年頃になり、自分のくせ毛を気にして学校に行くのも嫌だと思う時期があったそうです。そのような中、お母さまが「楽天市場」で当社のヘアアイロンを見つけてくださり、レビューが良かったことからご息女にプレゼントされたところ、朝の数分でサラサラのストレートヘアになり、「すごく楽しそうに学校に行くようになりました。ありがとうございます」という内容でした。
私自身もメンタル的にいろいろ悩んでいたこともあり、このレビューを読んで号泣しました。そして、自分が本質的に何をしたかったのかを考え直す機会になりました。当たり前の話ではありますが、当社の商品でお客さまの悩みを解決し、少しでも幸せな体験を届けることができた時に、自分はとても幸せになると実感しました。
そのため、本当にシンプルですが、この「幸せの連鎖」を世界中に広げていくことで、社員も幸せになり、お客さまも幸せになり、さらに偉大な会社を作れるのではないかと思い、このミッションを作成しました。
Ken:確かに、売上10億円となるとそれなりに利益も出ていて、年齢的にもお若かったので、かなり成功者の部類に入ると思います。
大西:ありがとうございます。
Ken:その段階で満足してしまう方も多いと思いますが、その中で上場も実現したというのは、やはり「幸せの連鎖」を広げていこうと努力を続けた結果なのでしょうか?
大西:そうです。世界中に広げていこうという意味では、まだまだ実現できていない部分もありますので、さらに成長させていきたいと考えています。
連結売上高・連結営業利益率の推移

Ken:続いて、業績のトレンドや推移についてご説明いただけますか?
大西:スライドのとおり、2024年12月期に売上高が450億円まで上がっています。2017年12月期には一時的な踊り場がありましたが、商品の選択と集中、また「IPTOS(イプトス)」というモデルを再構築するなど、さまざまなテコ入れを行い、再び成長を続けています。
Ken:途中で停滞する局面もあったと思いますが、そこで止まってしまう企業も多い中で、改善されたポイントや、良くしていった施策を教えていただけますか?
大西:要因としては、数十名の組織から300名程度まで急激に拡大したことが挙げられます。その中で、さまざまな仕組みが追いついていなかったという問題がありました。具体的には、人事制度をはじめとして、例えばヒット商品を生み出すための仕組みが十分に整備されておらず、その影響で売上が一時的に停滞したことが挙げられます。
どのように変革を進めたかについては、さまざまな改善を行いましたが、最も重要だったことは、経営者として私自身が深く反省し、ボードメンバー全員で「自分たちが悪かった」「自分たちが変わっていかなければならない」という意識を共有して議論を重ねたことです。この姿勢が改革の出発点となり、最終的には「思い」の部分が一番大事だったのではないかと考えています。
Ken:再成長に伴い、利益率も改善して伸びてきています。先ほどご説明いただいたファブレスメーカーであること以外に、ビジネスモデルの構造上で利益率が上がりやすい要因はありますか?
大西:ベンチャー企業のため、創業当初は原価削減チームがあまりいませんでした。しかし、上場準備の段階からは購買のプロフェッショナルの方々に入社いただき、それまでできていなかった原価削減に多くの改善点を見出すことができました。これを効率化することで利益率が上がってきたという点が挙げられます。また、ヒット商品が出ると利益率も一気に上昇しますので、その影響も大きいと考えています。
ヒットを量産できるI-neの3つの強み

Ken:商品を作る上で重要なポイントや強みについて、ご説明いただけますか?
大西:当社の強みは大きく3つあります。「作る力」であるブランド創出力、オンラインとオフラインを統合したOMO(Online Merges with Offline)、当社独自のブランドマネジメントシステム「IPTOS」です。
Ken:美容業界ではどのような目線で売上を拡大していくのでしょうか? 「髪をサラサラにしたい」「乾燥を防ぎたい」といった多様な需要があると思いますが、それに対してさまざまなブランドを展開し、「売れるブランド」を数多く展開していくことが重要なのでしょうか?
大西:ヘアケアを例に挙げると、当社独自のお客さまのポジショニングマップを設定しており、どのような方がどのくらいいらっしゃるかを把握する、独自のマーケティングノウハウを持っています。その中で、お客さまの課題や悩みがどこにあるのかを明確にし、仮説を立てながら取り組んでいます。
現在のトレンドを踏まえ、どのようなコンセプトや成分の商品が売れるのかをしっかりと考え、作り上げるという方法を採用しています。
強み① IPTOS(ブランドマネジメントシステム)

Ken:先ほどIPTOSについて少しお話しいただきましたが、多くの投資家が関心を寄せていると思います。私の知り合いも、IPTOSがいかに優れているかを昨年解説しており、気になっているため、ご説明いただけますか?
大西:IPTOSは、当社独自のブランドマネジメントシステムです。スライドのとおり、アイデア、企画、検証、オンライン・オフラインでのテスト販売を経て、ECスケール・小売拡大までのプロセスを各フェーズに分け、独自で管理するシステムになっています。
IPTOSの背景には非常に細かいゲートを設定しています。例えば「コンセプト段階で調査結果を出し、この会議体でこうした議論が行われた場合に次の段階に進む」といった仕組みになっています。また、「eコマースでテストを行い、広告のCPAが一定水準を満たし、リピート率が想定以上であれば次のステップに進む」など、ゲートを非常に細かく設定しています。これにより、「テストで結果が芳しくない場合には撤退する」という判断も迅速に行えます。
こうした仕組みを活用することで、多くの試行機会が得られます。はじめから1万何千店舗の実店舗に配架する計画を立てるとリスクが高まりますが、当社はもともとeコマースに強みを持っていることもあり、IPTOSのシステムを通じて、多くの試行機会をリスクを抑えながら実行できます。これがIPTOSの大きな特徴です。
2つ目の特徴は、創業当初からIPTOSに近いかたちでPDCAを回し、ゲートに対して成功体験や失敗体験のデータを蓄積してきたことです。このデータに基づき、「この商品はeコマースでこれくらい売れそう」「ドラッグストアではこれくらい売れそう」といった需要予測の精度が商品企画段階で徐々に向上しています。
そのため、商品を製造しなくても、自社のノウハウを活用して「ヒットしそうか」をある程度判断できるようになり、高速でヒット商品を生み出す確率がどんどん上がる仕組みが構築されています。
Ken:その商品が売れるか売れないかが重要で、それが売れなければ会社が傾くような状況だと、その商品次第になってしまうと思います。御社はそうではなく、多くの試行機会の中で、ヒット商品になりそうなものを選んで市場に出しているということですね?
大西:おっしゃるとおりです。
強み② ブランド創出力

Ken:先ほど「それ以外にも強みがある」とお話ししていたと思います。その他の強みについてもご説明いただけますか?
大西:まず、ブランド創出力という強みについてお話しします。大きく3つあります。1つ目は、スライド左側に記載している「コンセプト設計」です。
当社がヒット商品を作る上で最も重要視するのは、秀逸なアイデアです。当社はベンチャー企業であり、大手企業と比較すると人員も少なく、資本力も限られています。その中で、いかに秀逸なアイデアを生み出すかが極めて重要です。当社は、アイデアカルチャーが非常に強いと思っており、年間約1万個以上のアイデアが集まります。
それらを「サイエンス」と呼んでいる独自調査で絞り込みます。一般的な会社では、調査結果が最も良いものをリリースすることが多いですが、当社はそうではありません。当社の強みはバズを起こすことにありますが、調査結果が良いものは既視感があり、バズが起こりにくいためです。
Ken:慣れ親しんだものになっているのですね?
大西:はい、新規性が少し欠けているのです。したがって、そのあたりの感性を「アート」と呼んでいます。「サイエンス」である程度絞り込んだコンセプトやアイデアに対して、「これはバズりそうなのか?」「これは半歩先のコンセプトなのか?」「お客さまの課題をどう解決できるのか?」など、定性的な観点でさらに絞り込んでいきます。このようにして最終的に商品を作り上げるのが、コンセプト設計のプロセスです。
2つ目はクリエイティブ力の重要性です。当社はeコマースに強みを持つ会社ですが、手に取る前に商品がいかに優れているかをお客さまに感じていただくために、クリエイティブ力を非常に重要視しています。
当社には87名のインハウスクリエイターが在籍しており、質の高いクリエイティブで商品を作り上げています。また、クリエイターが社内にいることで、PDCAサイクルを非常に速く回すことができることも特徴です。eコマースを進める上で重要な要素の1つであり、当社の強みであると考えています。
3つ目はOEMとの連携です。当社は全国200社以上のOEM企業とのネットワークがあり、カテゴリーごとに得意な企業と密にやり取りをしながら商品を開発しています。この広範なネットワークを活用し、質の高い商品を生み出しています。
Ken:先ほど、クリエイターが2割ほど在籍しているとのお話がありましたが、同業他社と比べても多いという印象はありますか?
大西:圧倒的に多いと思います。ファブレスメーカーとしては、かなり多いほうだと思います。
Ken:デザインもとてもおしゃれですよね。商品名だけでは御社の商品だと気づかない方もいるかもしれませんが、商品を見ると「ちょっとおしゃれだな」「これはI-neっぽいな」と感じることがあります。
大西:ありがとうございます。
Ken:ファブレスメーカーである一方、研究開発にも注力されているとのことですが、具体的な取り組みについてもう少し教えていただけますか?
大西:ファブレスメーカーで研究機関を保有している企業は少なく、海外でも一部に限られると思います。OEM企業の研究機能を活用しながら商品を開発する形態が主流かと思います。
しかし、当社では自社で研究開発機能を持ち、独自性のある商品をしっかりと開発しています。こうした自社開発とOEM企業との連携が、当社の特徴です。また、大学との共同研究も積極的に進めています。
強み③ OMO(Online Merges with Offline)

Ken:もう1つの強みについてご説明いただけますか?
大西:オンラインとオフラインの融合、すなわちOMOです。美容業界では、オンラインに強い企業はベンチャー企業、オフラインに強い企業は大企業である場合が多いですが、当社は創業以来、オンラインとオフラインを融合させて展開してきました。
オンラインとオフライン、それぞれで何が売れるかを熟知した上で、OMOマーケティングを実践しているビューティカンパニーは非常に少ないです。当社はこの領域でトップランナーの一角を担っていると考えています。
Ken:オンラインにおけるマーケティングの強みは、eコマースなどが挙げられると思います。オフラインにおけるマーケティング、例えば棚のシェア拡大などの面で重要な点や交渉について教えてください。
大西:eコマースの実績はもちろん重要ですが、小売店との長年の関係性と実績も重要です。当社は約20年にわたり、オフラインでの小売店との関係を構築しており、これは今後も強みとなる部分です。また、小売店から「デジタルに強いメーカー」という認識を持っていただいており、デジタルの販促企画とセットで商品のご提案ができる点も、当社の強みの1つと考えています。
Ken:ちなみに「YOLU」や「BOTANIST」を扱っていないドラッグストアや小売店は非常に少ない印象ですが、これらのヒット商品があることが交渉力の増強につながる面もあるのでしょうか?
大西:はい。売れる商品があることは大前提であり、最も重要な要素だと考えます。
M&A方針とこれまでの実績

Ken:続いて、M&A戦略についておうかがいします。IPTOSのシステムをはじめ、新商品の創出力もさることながら、直近で実施されたM&Aによる業績面での寄与も見られます。M&Aによる成長戦略について教えてください。
大西:当社はM&Aにおいて、売却と買収の両方で複数の実績があります。以前からブランドの売却を行っており、例えば当社が開発した飲料ブランド「CHILL OUT」を2023年に日本コカ・コーラ社に約30億円で売却しました。事業の選択と集中という観点でも有意義だったと考えています。
買収については、昨年、スキンケアブランド「TOUT VERT」を展開するトゥヴェール社や「SALONIA」の商社機能を担うArtemis社(旧TTrading社)をM&Aしました。
Ken:商社機能の買収は利益率の改善も意図していますか?
大西:おっしゃるとおりです。Artemis社の買収により、年間約8億円の中間マージン削減が見込まれます。また、トゥヴェール社はオンラインに強い企業であり、当社のオフライン展開力と相性が良かったため、M&Aを行いました。
Ken:将来性がありながら、オンラインまたはオフラインのどちらかに課題を抱える企業を狙う戦略ということでしょうか?
大西:おっしゃるとおりです。日本には優れたブランドや商品を持ち、将来性のある企業が多数存在します。そのような企業と連携しながら、M&Aを推進していきたいと考えています。また、基本戦略は同様ですが、独自性のある企業や原価削減につながる取り組みを行っている企業など、幅広い視点で検討していきたいと考えています。
Ken:近年、日本の株式市場では、M&Aを活用している企業が評価される傾向が強まっていると感じます。一方で、買収後に十分な利益が出ない場合もあると思います。取得価格の抑え方や、買収後の想定との相違を防ぐために、御社ではどのような工夫をしていますか?
大西:ブランドを成長させられるかどうかを社内で徹底的に議論しています。「このブランドは伸ばせる」と確信が持てる案件に対してのみ価格交渉などを進めており、この点は当社が一貫して徹底できている部分だと考えています。
Ken:一般的には資本力がある企業などが条件としてよく挙げられると思いますが、御社では商品分析まで踏み込んだ検討を行った上で判断している、ということですね?
大西:そのとおりです。当社は明確な基準を持ってM&Aを進めており、優秀なメンバーで構成されるM&Aチームが分析に基づいて判断しています。この方針で今後も取り組んでいきたいと考えています。
株価推移と足元株価のディスカウント要因想定

Ken:株価についておうかがいします。増収増益を続けている一方で、足元の株価が下落している点について、ご認識を教えてください。
大西:現在の株価は割安水準にあると考えています。理由としては、大きく3つあると分析しています。
1つ目は、四半期ごとのボラティリティが大きい点です。ドラッグストア向けのビジネスでは、棚割りや納品時期のずれによって前年比較が大きく変動する場合があります。また、戦略的にコラボ商品や企画商品を毎年展開していますが、月ずれによる影響を受けやすく、株価が下がっているように見える状況です。なお、通期では安定した成長を維持していることから、この戦略は引き続き継続していく予定です。
2つ目は、M&Aです。M&Aによるのれん償却の影響で、営業利益ベースでは成長が鈍化して見えるかもしれませんが、EBITDAベースでは引き続き高い成長を達成しています。この点については、会計基準の変更などを社内で検討していきます。
Ken:会計基準が変更されるまでは、EBITDAを見たほうが御社の実態に近いということですね?
大西:EBITDAベースで見ていただければ、成長カーブをご確認いただけると思います。
3つ目は、主力のヘアケア系カテゴリーおよび美容家電カテゴリーの成長が、直近で一時的に鈍化していることです。
2025年第3四半期カテゴリー別売上高

Ken:ヘアケア系カテゴリーおよび美容家電カテゴリーの成長の鈍化について、具体的に教えていただけますか?
大西:2025年12月期第3四半期は、スキンケア他カテゴリーが期初計画を大きく上回る成長を遂げています。一方で、ヘアケア系カテゴリーと美容家電カテゴリーは前年同期を下回る結果となりました。これは、競争環境の激化が一因と考える方も多いかと思いますが、それ以上に社内体制の課題が要因だと考えています。
開発・投資意思決定プロセスの見直し(IPTOS再強化)

Ken:社内体制の課題に対して、どのように改善し、立て直すのか教えていただけますか?
大西:まず、要因についてご説明します。約2年前に、機能別から事業本部制への組織変更を行いました。従来はクリエイターやeコマース、営業といった機能別に本部を分けていましたが、次世代の事業責任者を育成するために、例えばBOTANIST事業部の中にクリエイターやeコマース、営業がいるような事業部別の組織に改めました。
しかしながら、運用開始から1年が経過した「YOLU」のリニューアル時に、お客さまへのリニューアルの訴求が弱く、従来の「YOLU」の商品が陳列されているイメージという課題が明らかになりました。当社は「アート」と「サイエンス」のバランスを重要視していますが、組織変更によってIPTOSが十分に機能せず、「サイエンス」に偏った、調査で良い結果が出たものを商品化していたことが要因でした。
この課題に対応するため、私を含めた機能別の組織時代の主要メンバーを中心に新たな意思決定プロセスを構築し、機能別と事業別を組み合わせた組織体制に変更しています。
2025年秋にリリースした「YOLU」の4バリアント目である「メロウ」シリーズは、一部意思決定プロセスの変更によりテコ入れした商品ということもあり、非常に好調です。新商品はゼロから開発すると1年ほどかかるため、新しい組織体制下で開発する商品は2026年12月期下期ごろから発売される見通しです。それまでは、従来品を改善した商品を販売していく予定です。
Ken:足元の業績にも改善が見られますか?
大西:第2四半期から第3四半期にかけて、「BOTANIST」「YOLU」ともに成長しています。組織改革の効果が徐々に現れていると考えています。
事業ポートフォリオ変革の進捗と課題改善に向けての対応

Ken:スキンケア他カテゴリーについておうかがいします。非常に成長していますが、その要因は何でしょうか?
大西:売上高1,000億円規模の企業を目指すため、ヘアケア系カテゴリー・美容家電カテゴリーに加えて新たな収益の柱を作ろうと、この数年、スキンケア他カテゴリーに当社の資源を重点的に配分してきました。このカテゴリーでは少人数体制でIPTOSが機能し、ヒット商品や次の有力商品の候補も複数生まれています。柔軟剤の「ReWEAR」や健康食品も好調で、今後も成長が見込まれるカテゴリーだと考えています。
Ken:最近では、ジムの会員数増加を背景にジム関連の銘柄が堅調で、自己投資への関心が高まっているように見受けられますが、どのように感じられていますか?
大西:「BOTANIST」を発売した10年前は、数百円のシャンプーが主流でしたが、現在では1,400円以上のものが一般的です。これはヘアケアのスキンケア化が進んだ結果であり、自己投資市場は拡大していると捉えています。
株主還元の拡充(株主優待の大幅拡充と増配)

Ken:株主還元についておうかがいします。株主還元の拡充を進められている理由や背景を教えてください。
大西:当社は株主還元として、100株から499株を保有する株主さまには「デジタルギフト」1万円分を、500株以上を保有する株主さまには「デジタルギフト」2万円分を提供しています。また、期末配当は13.5円から15.0円に増配しました。この背景には、当社における個人投資家さまの比率が非常に低いことから、個人投資家層の拡充と流動性の向上を目的としている点があります。
Innovation Never Ends/次期中計:2026年2月発表予定

Ken:最後に、投資家のみなさまへ一言お願いします。
大西:中期経営計画で発表しているとおり、当社は2028年から2030年にかけて売上高1,000億円、EBITDA140億円、営業利益110億円を達成し、国内を代表するビューティメガベンチャーとなることを目標としています。
グローバルという言葉を掲げるには海外売上比率が低いことが課題ですが、日本の美容商品は品質や管理体制の面で世界で十分戦えるポテンシャルがあると考えています。しかし現時点では、「Kビューティ」と呼ばれる韓国商品が世界のトレンドを占めており、日本の商品はまだ十分に世界で流通しているとはいえません。当社は、日本の美容商品「Jビューティ」を世界に広げるというビジョンを掲げています。
「Jビューティ」を世界に広げることで、日本の魅力やブランドを好きになる人を増やせると考えています。日本にとっても大きなメリットがあるでしょう。大手企業が世界で勝てる「Jビューティ」を広げる可能性もあるかもしれませんが、創業ベンチャーとして、当社がグローバル市場に挑戦することで、さまざまな日本のベンチャー企業やブランドが世界に挑戦する時代を築けるのではないかと考えています。
当社は、そのような時代の実現を目指し、売上高1,000億円を目標に掲げています。将来的には2,000億円、3,000億円といった規模の企業を目指し、引き続き成長に取り組んでいきます。
Ken:みなさまもぜひ銘柄登録や今後の決算、IR開示などにご注目ください。本日は株式会社I-neの大西さまにお越しいただきました。ありがとうございました。
大西:ありがとうございました。
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