*12:04JST 大豊建 Research Memo(4):建築事業の収益性が大きく改善、売上高・営業利益ともに期初計画を上振れた
■大豊建設<1822>の業績動向
1. 2026年3月期中間期の業績概要
2026年3月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比3.6%減の65,192百万円、営業利益が同43.0%増の895百万円、経常利益が同208.5%増の1,060百万円、親会社株主に帰属する中間純利益が同91.1%減の43百万円となり、期初計画(売上高63,000百万円、営業利益400百万円)を上回って着地した。
土木事業では、繰越案件の中で大きな割合を占めている大型JVサブ工事において、利益率の低い工事が進捗した影響でやや苦戦したものの、建築事業の収益性が改善したことにより補完し、営業利益は前年同期比43.0%増と大幅拡大した。なお、経常利益、親会社に帰属する中間純利益は会社計画を下回ったものの、これは第2四半期に計上予定であった投資事業からの配当金14億円の受領が下期にずれ込んだことによる。
受注高は前年同期比23.5%減の66,671百万円であり、期初計画の64,031百万円を上回った。土木事業については入札競争における受注獲得が伸び悩んだものの、建築事業については収益性や施工体制のバランスを考慮した受注選別を行いながらも、官公庁向け案件の獲得などにより計画対比23.4%上振れた。全社としては計画を上回る水準で受注を確保しており、今後も適正利潤の確保と安定的な受注拡大の両立に向けた取り組みが注目される。
2. 事業セグメント別動向
(1) 土木事業
土木事業は、受注高が前年同期比25.3%減の27,120百万円、売上高が同3.8%増の33,250百万円、売上総利益が同33.1%減の1,864百万円、営業損失が102百万円(前年同期は981百万円の利益)であった。受注高は、入札競争における受注獲得が低調で、「シールド工法」や「ニューマチックケーソン工法」に関する工事案件についても苦戦した模様である。利益面は、低採算な大型JVサブ工事の影響などにより収益性が悪化したものの、他の工事については順調に進捗し、概ね会社計画線で着地した。
(2) 建築事業
建築事業は、受注高が前年同期比22.8%減の38,957百万円、売上高が同11.0%減の30,263百万円、売上総利益が同126.0%増の2,552百万円、営業利益が845百万円(前年同期は495百万円の損失)であった。受注高は収益性と施工体制のバランスを考慮して受注選別を行ったことから前年同期比では減少したものの、官公庁案件の獲得などにより期初計画を大きく上振れた。利益面は、プロジェクト管理の徹底により施工不良に伴う手直し工事が発生せず、売上総利益率は同5.1ポイント、営業利益率は同4.2ポイント改善した。
同社は2023年5月19日に公表した2028年3月期までの中期経営計画において、いわゆる「2024年問題」への対応として、時間外労働の上限規制を見据えた施工体制の適正化を重視し、従来のような規模追求型の経営から脱却して選別的かつ利益重視の受注戦略へと転換している。資材価格の高止まりや人件費の増加といった厳しい外部環境下にありながらも収益性を重視した事業運営への転換は着実に進展しており、今後も安定した利益創出と持続的な成長に向けた基盤強化が期待される。
3. 財務状況と経営指標
2026年3月期中間期末の財務状況を見ると、資産合計は前期末比2,603百万円減少の147,239百万円となった。うち流動資産は同4,050百万円減少の116,016百万円であり、主に現金預金が1,362百万円、受取手形・完成工事未収入金等(電子記録債権を含む)が3,000百万円減少した。固定資産は同1,446百万円増加の31,222百万円であり、主には投資その他の資産が1,661百万円増加した。
負債合計は前期末比842百万円減少の75,934百万円となった。うち流動負債は同1,207百万円減少の62,654百万円であり、主には支払手形・工事未払金等(電子記録債務を含む)が3,696百万円減少した。固定負債は同364百万円増加の13,280百万円であり、主には繰延税金負債が232百万円、退職給付に係る負債が155百万円それぞれ増加した。
純資産合計は前期末比1,760百万円減少の71,304百万円であり、主には利益剰余金が配当金の支払により2,566百万円減少した。
主な財務指標を見ると、自己資本比率は47.3%と堅調な水準を維持しており、財務健全性が高いといえる。流動比率も185.2%と、短期的な支払能力に不安はなく、運転資金面の余裕がうかがえる。加えて、有利子負債が増加するなかでも、ネットキャッシュ(現金預金から有利子負債を控除して算出)は8,457百万円とプラスを確保しており、キャッシュ創出力の強さと財務基盤の安定性が示されている。こうした堅実な財務体質は、受注競争が激化する環境下でも戦略的な案件選別や投資の実行を可能にし、中期的な利益成長に向けた布石となるだろう。加えて、キャッシュポジションの厚みは、今後の大型案件への対応力、施工体制強化、人材育成など企業価値向上施策を推進する余地を広げる。財務の安定性を背景として、収益性改善や事業ポートフォリオの最適化が進むことで、持続的な利益拡大を期待できる環境にあると判断される。
4. キャッシュ・フロー
2026年3月期中間期のキャッシュ・フローを見ると、営業活動によるキャッシュ・フローは仕入債務の減少や未成工事受入金の減少などにより、2,878百万円の支出であった。投資活動によるキャッシュ・フローは長期貸付けによる支出などにより、997百万円の支出となった。財務活動によるキャッシュ・フローは短期借入金の増加などにより2,342百万円の収入となった。その結果、現金及び現金同等物の中間期末残高は前期末比1,378百万円減少の20,279百万円となったものの、依然として潤沢な残高を確保しており、財務の健全性は一定水準を保っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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1. 2026年3月期中間期の業績概要
2026年3月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比3.6%減の65,192百万円、営業利益が同43.0%増の895百万円、経常利益が同208.5%増の1,060百万円、親会社株主に帰属する中間純利益が同91.1%減の43百万円となり、期初計画(売上高63,000百万円、営業利益400百万円)を上回って着地した。
土木事業では、繰越案件の中で大きな割合を占めている大型JVサブ工事において、利益率の低い工事が進捗した影響でやや苦戦したものの、建築事業の収益性が改善したことにより補完し、営業利益は前年同期比43.0%増と大幅拡大した。なお、経常利益、親会社に帰属する中間純利益は会社計画を下回ったものの、これは第2四半期に計上予定であった投資事業からの配当金14億円の受領が下期にずれ込んだことによる。
受注高は前年同期比23.5%減の66,671百万円であり、期初計画の64,031百万円を上回った。土木事業については入札競争における受注獲得が伸び悩んだものの、建築事業については収益性や施工体制のバランスを考慮した受注選別を行いながらも、官公庁向け案件の獲得などにより計画対比23.4%上振れた。全社としては計画を上回る水準で受注を確保しており、今後も適正利潤の確保と安定的な受注拡大の両立に向けた取り組みが注目される。
2. 事業セグメント別動向
(1) 土木事業
土木事業は、受注高が前年同期比25.3%減の27,120百万円、売上高が同3.8%増の33,250百万円、売上総利益が同33.1%減の1,864百万円、営業損失が102百万円(前年同期は981百万円の利益)であった。受注高は、入札競争における受注獲得が低調で、「シールド工法」や「ニューマチックケーソン工法」に関する工事案件についても苦戦した模様である。利益面は、低採算な大型JVサブ工事の影響などにより収益性が悪化したものの、他の工事については順調に進捗し、概ね会社計画線で着地した。
(2) 建築事業
建築事業は、受注高が前年同期比22.8%減の38,957百万円、売上高が同11.0%減の30,263百万円、売上総利益が同126.0%増の2,552百万円、営業利益が845百万円(前年同期は495百万円の損失)であった。受注高は収益性と施工体制のバランスを考慮して受注選別を行ったことから前年同期比では減少したものの、官公庁案件の獲得などにより期初計画を大きく上振れた。利益面は、プロジェクト管理の徹底により施工不良に伴う手直し工事が発生せず、売上総利益率は同5.1ポイント、営業利益率は同4.2ポイント改善した。
同社は2023年5月19日に公表した2028年3月期までの中期経営計画において、いわゆる「2024年問題」への対応として、時間外労働の上限規制を見据えた施工体制の適正化を重視し、従来のような規模追求型の経営から脱却して選別的かつ利益重視の受注戦略へと転換している。資材価格の高止まりや人件費の増加といった厳しい外部環境下にありながらも収益性を重視した事業運営への転換は着実に進展しており、今後も安定した利益創出と持続的な成長に向けた基盤強化が期待される。
3. 財務状況と経営指標
2026年3月期中間期末の財務状況を見ると、資産合計は前期末比2,603百万円減少の147,239百万円となった。うち流動資産は同4,050百万円減少の116,016百万円であり、主に現金預金が1,362百万円、受取手形・完成工事未収入金等(電子記録債権を含む)が3,000百万円減少した。固定資産は同1,446百万円増加の31,222百万円であり、主には投資その他の資産が1,661百万円増加した。
負債合計は前期末比842百万円減少の75,934百万円となった。うち流動負債は同1,207百万円減少の62,654百万円であり、主には支払手形・工事未払金等(電子記録債務を含む)が3,696百万円減少した。固定負債は同364百万円増加の13,280百万円であり、主には繰延税金負債が232百万円、退職給付に係る負債が155百万円それぞれ増加した。
純資産合計は前期末比1,760百万円減少の71,304百万円であり、主には利益剰余金が配当金の支払により2,566百万円減少した。
主な財務指標を見ると、自己資本比率は47.3%と堅調な水準を維持しており、財務健全性が高いといえる。流動比率も185.2%と、短期的な支払能力に不安はなく、運転資金面の余裕がうかがえる。加えて、有利子負債が増加するなかでも、ネットキャッシュ(現金預金から有利子負債を控除して算出)は8,457百万円とプラスを確保しており、キャッシュ創出力の強さと財務基盤の安定性が示されている。こうした堅実な財務体質は、受注競争が激化する環境下でも戦略的な案件選別や投資の実行を可能にし、中期的な利益成長に向けた布石となるだろう。加えて、キャッシュポジションの厚みは、今後の大型案件への対応力、施工体制強化、人材育成など企業価値向上施策を推進する余地を広げる。財務の安定性を背景として、収益性改善や事業ポートフォリオの最適化が進むことで、持続的な利益拡大を期待できる環境にあると判断される。
4. キャッシュ・フロー
2026年3月期中間期のキャッシュ・フローを見ると、営業活動によるキャッシュ・フローは仕入債務の減少や未成工事受入金の減少などにより、2,878百万円の支出であった。投資活動によるキャッシュ・フローは長期貸付けによる支出などにより、997百万円の支出となった。財務活動によるキャッシュ・フローは短期借入金の増加などにより2,342百万円の収入となった。その結果、現金及び現金同等物の中間期末残高は前期末比1,378百万円減少の20,279百万円となったものの、依然として潤沢な残高を確保しており、財務の健全性は一定水準を保っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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